脂質異常症とは?
脂質異常症とは血液中のLDL(悪玉)コレステロールや中性脂肪が多過ぎる、
あるいはHDL(善玉)コレステロールが少なすぎる、などの状態を示す病気のことです。
血液中に余分な脂質が多くなると、動脈硬化を起こしやすくなり、心筋梗塞や脳卒中などの
リスクが高くなります。
血管に強い圧力がかかっている高血圧の人が脂質異常症をともなうと、血管壁が傷つきやすいため
動脈硬化がさらに進行するリスクがあります。
また、インスリンが不足すると中性脂肪が体内で利用されにくくなり、
血液中に中性脂肪が増えてしまいます。
そのため糖尿病の人は脂質異常症を伴いやすく、動脈硬化を進行させるリスクが高まります。

脂質異常症の診断基準
基準値(空腹時採血の場合)は以下のとおりで、このいずれかの数値が 基準値を満たさなくなると脂質異常症となります。

- LDL(悪玉)コレステロールが多い場合
- HDL(善玉)コレステロールが少ない場合
- 中性脂肪が多い場合
この3タイプに区分されています。
また、LDL(悪玉)コレステロールが基準値より低くても、他の病気(高血圧や糖尿病など)がある時の
リスクを抑えるために、境界域(120~139mg/dL)が定められています。
善玉コレステロール・悪玉コレステロールとは?
コレステロールには、LDL(悪玉)コレステロールとHDL(善玉)コレステロールがあることは、よく知られています。
この2つは、どこが違うのでしょうか。
実は「悪玉」と「善玉」は、働き方によって種類が分けられています。
同じリポタンパクコレステロールですが、コレステロールの含有量や密度が異なります。
特に体内での働き方が両極端に違ってきます。
コレステロールは脂質で水に溶けないため、血液中を流れる時はタンパク質と結合した
リポタンパク質の状態で移動します。
結合しているリポタンパク質の種類により、低密度リポタンパク(LDL)コレステロールと
高密度リポタンパク(HDL)コレステロールに区別されます。
LDLコレステロールは、肝臓に蓄積された余分なコレステロールを体のあらゆるところに
運ぶ働きをするので「悪玉」と呼ばれ、
HDLコレステロールは、さまざまな血管壁に蓄積されているコレステロールを回収して肝臓に運ぶ働きをするので
「善玉」と呼ばれています。

「悪玉」が増えるとたくさんのコレステロールが全身に運ばれて蓄積されてしまい、 逆に「善玉」が少ないとコレステロールを回収してくれる量が減るので体内のコレステロール量が増えてしまいます。
脂質異常症は3タイプ
「高LDLコレステロール血症」
体にコレステロールを運ぶ役割をしているLDL(悪玉)コレステロールが多すぎる状態で、
脂質異常症の中で最も多いタイプです。
「低HDLコレステロール血症」
不要なコレステロールを回収してくれるHDL(善玉)コレステロールが少ない状態で、
体内にコレステロールがたまりやすくなっています。
「高トリグリセライド血症」
体内に中性脂肪が多すぎる状態です。中高年男性にはこのタイプも多く見られます。
また、中性脂肪が多いとLDLコレステロールも増加する傾向にあります。
脂質異常症はどんな症状?
脂質異常症には、自覚症状はほとんどありません。
自覚症状はありませんが、知らないうちに増加した脂肪分が全身の血管を痛めつけることで
血管の老化が進み、動脈硬化につながります。
動脈硬化は血液の流れを悪くするので、脳卒中や心筋梗塞など命に関わる疾患の一因としても注意が必要です。
脂質異常症の原因
「高LDLコレステロール血症」
動物性脂肪の多い食品(肉や乳製品)、コレステロールが多い食品(卵やレバーなど)を
多く摂りすぎているかもしれません。また食べ過ぎによるカロリー過多も要因のひとつです。
「低HDLコレステロール血症」
主に運動不足、肥満、喫煙が原因と考えられます。
バランスの良い食事も摂りながら、生活習慣の改善にも取り組みましょう。
「高トリグリセライド血症」
食べ過ぎや飲み過ぎによりカロリーを過剰摂取していませんか。
特にアルコールの過剰摂取は中性脂肪を増やしやすいです。
脂質異常症の対策は?
生活習慣の改善から
動物性脂肪を減らし、血液中のコレステロールを減らしてくれる植物性たんぱく質(大豆類など)、
コレステロールや中性脂肪の吸収をおさえてくれる食物繊維を多く摂るように心がけましょう。
また、食生活だけでなく運動や食べ過ぎ飲み過ぎを控えたりと生活習慣の改善も一緒におこなうことが重要です。
- 禁煙し、受動喫煙を回避する
- 過食を抑え、標準体重を維持する
- 肉の脂身、乳製品、卵黄の摂取を抑え、魚類、大豆製品を増やす
- 野菜、果物、未精製穀類、海藻の摂取を増やす
- 食塩を多く含む食品の摂取を控える
- アルコールの過剰摂取を控える
- 有酸素運動を毎日30分以上行う
定期的な健康診断
定期的に健康診断を受けることで、早期にコレステロール値の上昇に気付くことができます。
健康診断では採血の項目によっては総コレステロールのみ分かる場合がありますので、
総コレステロール値が大きく上がった際は、LDLコレステロールの増加なのか
HDLコレステロールが減少しているのかなど要因を詳しく調べることも大切です。
脂質異常症に効果的な植物ステロール
植物ステロールによるLDL(悪玉)コレステロールの低減
植物ステロールについては約70年以上も前から研究されており、
経口摂取すると3週間程度でLDL(悪玉)コレステロール濃度が低下することが知られています。
植物ステロールとは?
コレステロールがすべての動物に存在するのと同じように、植物にも独自の「ステロール」が存在し、
野菜や果物、穀類など植物の細胞膜の成分となっているものを総称して植物ステロールといいます。
コレステロールは単一の化合物ですが、植物ステロールには多くの種類があります。
一般的な植物に見られる主要な植物ステロールは、β-シトステロール、カンペステロール、
スティグマステロールです。
コレステロールと植物ステロールは、その構造がよく似ています。

植物ステロールを含む食材

《穀類》
・小麦(68.8mg)、トウモロコシ(177.6mg)
《豆、タネ類》
・大豆(160.7mg)
・ナタネ(308mg)、ゴマ(714mg)
《野菜、果物》
・ブロッコリー(42.6mg)、キャベツ(10.7mg)
・リンゴ(10.2mg)
植物ステロールの血中コレステロール濃度の低下効果

植物ステロール摂取によりコレステロールおよび LDL(悪玉)コレステロールの低下が確認された
有効摂取量について
近年では、3g/日以下の植物ステロールで十分有効であることが多くの臨床試験で示されています。
多くの臨床試験のメタ解析から、2g/日の植物ステロールを摂取すると、
LDL(悪玉)コレステロール濃度を10%低減できるという結果が得られています。
このLDL(悪玉)コレステロール低下作用が期待できる植物ステロールの摂取量の最少量は、 遊離型換算で0.8g/日(エステル型では1.3g/日)と推定されています。
血清総コレステロール濃度が高い人ほど、植物ステロール摂取の効果が現れやすく、 1.5〜2g/日の摂取で、より明確な効果が得られると報告されています。
植物ステロールの安全性
植物ステロールは植物性食品(野菜や果物、穀物など)や植物油に含まれている成分であり、 ヒトは通常の食事から1日に300〜400mg程度の植物ステロールを摂取しています。 古くから食経験が豊富にあり、安全性に関する研究も多くなされています。
植物ステロールは難吸収性で体内に取り込まれにくく、わずかに吸収されても 体内蓄積性がないため、安全性は非常に高いと認識されています。
実際に、長期臨床試験および1日あたり25gまでの大容量植物ステロール投与試験において、 重大な副作用や有害事象は報告されていません。
※注意:
極めて稀な遺伝的疾患である植物ステロール血症(シトステロール血症)の患者については、
体内に植物ステロールが蓄積し、それが黄色腫や早発性冠動脈疾患といった症状を
引き起こす原因となるため、植物ステロールの摂取を制限することが推奨されています。
したがって、植物ステロールは高コレステロール・高中性脂肪に起因する 動脈硬化性疾患の予防に有効で、多量に摂取しても害のない、身近で安全な健康機能性成分です。